こちらでは、偽睾丸(人工睾丸)挿入術について解説いたします。
以前に病気や怪我などによって睾丸の摘出を行っている方が見栄えの問題として解決したい場合に偽睾丸(ぎこうがん)という人工の睾丸を挿入する方法があります。
睾丸の片側または両側がないことで生殖機能以外は特に問題ありませんが、やはり心理的なコンプレツクスは強いようです。
以下、偽睾丸(人工睾丸)挿入術の詳細についてお伝えしていきます。
偽睾丸は基本的に楕円形の形をしたものになります。
大きさは様々ありますが、通常は入れる側の反対側の睾丸の大きさを計測してそれに近いサイズのものを入れることになります。
両方に挿入する場合には平均的な大きさのものをいれることになります。
長年睾丸が無い状態の場合、皮膚が縮んで伸展性が悪いことがありますので無理のない範囲で選ぶことになります。
陰茎や陰嚢の付け根を切開して、シリコンでできた人工の睾丸を入れます。
例えば右の睾丸が無い場合には陰嚢の右側を2から3cm程度切開をしてプロテーゼを入れるスペースを作り、挿入します。
傷跡は陰嚢の皮膚ですので通常は大きく目立つことはありません。
左側睾丸摘出後の方です。
左偽睾丸挿入術をご希望されました。
片方のたまがないことによるコンプレックスの解消が目的です。
立った時と寝た時の状態を示します。
左の睾丸が無い場合、右の睾丸が肥大していることがよくあります。
右の睾丸の大きさを計かり、その計測を元に左の人工睾丸(インプラント)の大きさを決めました。
おおむね対象に近い状態になりました。
睾丸がなかった左側の皮膚は成長が進んでいないためインプラント挿入時は右に比べて張りが強い状態になります。
右の睾丸の大きさに合わせてそれに近いものを挿入します。
インプラントを入れたところの縫合部分です。
一般的には陰嚢の手術後の傷痕はかなり目立ちにくくなります。
右側睾丸摘出後の方です。
小さいころは「かたきん」といじめられたそうです。
以前に偽睾丸挿入術を2回お受けになられていました。
右に入れている偽睾丸(人工睾丸)が左の睾丸の後ろに回ってしまい、邪魔で困るということと、現在はいっている偽睾丸が硬いため柔らかいものに変えてほしいとのことでした。
立った時と寝た時の状態を確認しました。
左の睾丸の裏側に右の偽睾丸が回り込んでおりました。
そのため左の睾丸が偽睾丸に押されて前に突出しており、陰茎が右向きになっていました。
前回の手術の皮膚縫合部分を確認しました。
そこに粉瘤という皮膚のできものもありましたので合わせて切除して、そこから新しい偽睾丸を挿入することにしました。
皮膚を切開し、入っているインプラントを取り出しました。
取り出したものは硬さのあるインプラントでしたので今回は予定通り柔らかいものに変えることにしました。
大きさは前回入っているものとほぼ同じ大きさの楕円形のものを使用しています。
前回とは入れる場所を変えるため右陰嚢の新たなスペースを作ってそこに新しいインプラントを挿入しました。
術後はおおむね予定通りの位置に挿入できました。
陰茎の曲りも改善されたようです。
最後にもう一度立った時と寝た時の状態を治療前と治療後で比較します。
自然な陰嚢(睾丸)の見栄えとなりました。
手術間もない頃に最も気になる合併症は手術をした陰嚢部分に血液のたまり(血腫)ができないかどうかということです。特に手術して2日間は慎重に経過を診る必要があります。少量の出血は問題ありませんが、万が一血腫が起きた場合には血腫を外に出してあげる処置が必要になります。
偽睾丸インプラントは生体適合性のよい医療素材ですが、それでも異物は異物です。
ですので細菌感染を起こしてしまう可能性があります。
必ずしも手術の傷口から細菌感染が起こるわけではなく、体の免疫力が落ちてしまった場合などにどこからか入った細菌が血流の無いインプラントに付着してしまうこともあり得ます。
今まで経験はありませんが起こった場合には抗菌薬の投与やインプラントの取り出しなどが必要になることが考えられます。
挿入する偽睾丸は基本的には対側の睾丸の大きさと同じくらいの大きさのものを挿入します。しかしながら入れる側の皮膚は縮んでいることが多いため同じ大きさのものを入れてもすぐには陰嚢の皮膚がのびてくれないこともあります。
そのため見栄えとして弱冠左右差がでることもあります。
ただし、入れる前に比べれば随分自然な陰嚢に見えますのでその辺で気にされる方はほとんどいません。
偽睾丸挿入は陰嚢の皮膚を実際に切開をして入れることになります。
陰嚢の皮膚はもともとシワだらけなのでパッと見の傷痕はほとんど気になりませんが、傷痕がゼロになることもありません。
まれに傷痕に粉瘤という小さなできものができることもあります。
特に吸収糸で手術を行った場合の方ができやすいのではないかと考えております。
もともとなかった部分に偽睾丸を挿入するためその存在感から違和感を感じられる可能性があります。
ほとんどの場合は想定範囲内の感覚のようで、今まで気になる方はいらっしゃいませんでしたが上記症例紹介の方のように術後に邪魔だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
麻酔は下記から選ぶことができます。
偽睾丸挿入の場合は点滴無痛麻酔がお勧めです。
治療後 | 陰嚢(いんのう)をテーピングします 2日後にはずします |
通院 | 2週間後に経過観察(お時間のある方のみ) |
抜糸 | 10日前後に抜糸をおこないます。 吸収糸の場合は抜糸はありません。 |
性行為 | 3週間後より可能です(個人差あり) |
シャワー | 2日後(テーピング除去後)より可能です |
入浴 | 1週間後より可能です |
激しい運動 | 1週間後より可能です |
アルコール | 1週間後より可能です |
当院での偽睾丸挿入術の費用についてご説明いたします。
偽睾丸挿入術 | 通常費用 | モニター費用 |
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ドイツ・ポリテック社 | 44万円 | 21.89万円 |
フランス・セビン社 | 46.5万円 | 25.3万円 |
当院では現在、ポリテック社(ドイツ)とセビン社(フランス)を採用しておりますが、特にご要望のない場合はポリテック社製を使用します。
通常範囲内の大きさを数種類在庫として用意しておりますが、在庫にない大きさが必要な場合は納品されるのに約1から2週間かかります。